2008年2月21日木曜日

民間給与8年連続ダウン、パート増など背景

 民間企業に勤める人が2005年1年間に受け取った1人当たりの平均給与は436万8000円で、前年より2万円(0.5%)減ったことが28日、国税庁のまとめでわかった。1998年分以来、8年連続のダウン。
 
 前年より給与所得者が0.6%(34万人)増えて約5304万人に上る一方、給与総額は201兆5802億円で0.1%(1940億円)減少。雇用環境が改善したものの、正社員より給与の少ないパートなど非正規雇用者が増えていることが要因とみられる。
 
 調査は約2万1000社で働く正社員やパートなど約28万8000人の数値を基に推計した。

OECD、日本に生産性向上・雇用改革を勧告へ

 【パリ=野見山祐史】経済協力開発機構(OECD)は21日開いた経済開発検討委員会(EDRC)で、日本経済の動向や構造改革について討議した。中期的な成長力を高める方策として、サービス産業の生産性向上や雇用制度の改革が必要との指摘が相次いだ。3月に公表する対日経済審査報告書で規制緩和や女性の就業促進を急ぐよう勧告に盛り込む。

 規制について同委では、航空分野の発着枠制度やエネルギー分野の料金設定を改善すべきだとの指摘があったほか、ノウハウを持つ外国企業の対日直接投資を促して生産性を高めるべきだとの提案もあった。雇用では女性の就業促進と出生率向上を両立させるための制度整備や、非正規労働者の技能訓練拡充が重要だとの指摘が出た。

ネットカフェ難民、全国で5400人・厚労省調査

 ネットカフェを泊まり歩いて暮らす「ネットカフェ難民」が全国で推計約5400人にのぼることが、厚生労働省が初めて行った調査で28日分かった。半数が日雇い派遣やパートなど非正規雇用だったほか、40%は失業者や就職活動をしていない無業者だった。年齢別では20代が26.5%とトップで 50代も23.1%。
 
 厚労省は住居確保や就労支援に向けて約1億7000万円を来年度政府予算の概算要求に盛り込む。厚労省は6月から、全国約3200店のネットカフェなどに電話調査。店内で夜を明かす生活を送っている利用者が1日当たり約6万900人にのぼり、うち7.8%が「住居がなく、寝泊まりするため」に店を利用していることが判明した。

職場の“モザイク模様”一段と



 最近の景気回復にもかかわらず、正社員を増やそうとする動きはごく最近まで手控えられてきました。正社員の数は大手銀行・証券が相次いで破たんした97年の後半を境に減り始め、97年から03年の6年間で約370万人減少しました。逆にパートタイムなどの非正規雇用者は約140万人増えています。こうした「正社員の代わりにパートタイムを」という傾向が、02年からの回復期では一段と目立っています。

 特にパート化が進行しているのが卸売・小売・飲食店で、パートタイム比率はここ10年の間に約10ポイント上昇、雇用者の半分に迫る勢いです。大手スーパーでは、売場責任者までは正社員もパートも同じような待遇にするなど、パートの戦力化が進められています。

 もっとも、今後しばらくはパートの伸びはいったん落ち着きそうです。今年9月の新規求人はパート以外が前年比15.6%増だったのに対し、パートへの新規求人は同3.7%増にとどまりました。正社員の減少はようやく足元でブレーキがかかる兆しを見せています。
 
 ただ、もう少し長い期間で考えた場合、団塊世代がリタイアし始める07年以降の正社員の穴をどうやって埋めるかが企業の人事政策の大きな課題になってきます。この「2007年問題」に対して、パートを中心とした非正社員雇用が1つの柱になることは間違いないでしょう。まもなく到来する人口減少の時代にあって、労働力を補う有力な手立てが高齢者の再雇用と女性の戦力化ですが、いずれの場合にも、正社員以外での雇用になる割合が高いと考えられるからです。
 
03年厚生労働省「就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、労働者のうち、パートや派遣、契約社員などの非正社員は34.6%に達しています。パート以外の形態はいずれも2%程度のシェアでしかありませんが、ほとんどが99年に行われた同調査での比率を上回っています。職場は年功序列の「単色のピラミッド」から、正社員とパートで構成される2色の段階を経て、今は様々な「モザイク」に変わり始めているようです。今後、豊富な経験を持つ高齢者は契約社員や嘱託社員として復帰、出産・子育てのため就業率が低かった30代の女性が、キャリア志向を抱いて労働市場に参入、といったケースも考えられ、職場のモザイク模様は「シルバー」や「キャリア」というピースが加わり、ますます多彩になっていきそうです。

三井住友銀、派遣社員2000人を正社員に・一般職廃止

三井住友銀行は5日、約2000人の派遣社員を来年夏に正社員として採用する方針を決めた。併せて本部や支店で補助的な業務を担う「一般職」を廃止する。女性の働き方の多様化に対応し、営業や管理職への道を開く。メガバンクは総合職と一般職から成る伝統的な人事制度を守ってきたが、人手不足の解消と競争力強化のため、柔軟な形へ転換する。

 同行は一連の人事制度改革をこのほど労働組合に提案した。組合との調整を経て来年7月1日に実施する計画。派遣社員を2000人規模で一斉に正社員として雇用するのは日本の企業では異例だ。一般職の廃止はメガバンクで初めて。

年休取得率、過去最低タイの46.6%

昨年1年間に企業の正社員が取得した年次有給休暇(年休)は1人平均8.3日で、取得率が平成17年に並ぶ過去最低の46.6%にとどまったことが12日、厚生労働省の調査で分かった。

 厚労省は「景気回復と人員削減が絡み、一人当たりの仕事量が増え、休みづらい状況があるとみられる」と分析。自分の評価に響く不安など、取得しづらい雰囲気も背景にあるのではないかと指摘している。

 調査は今年1月、常用雇用者30人以上の全国5343社を対象に実施した。回答率は78.2%。

 調査によると、付与された年休の平均日数は前年より0.2日減り17.7日。平均取得日数は前年に比べて0.1日減の8.3日だった。

 従業員1000人以上の大企業では、取得日数は9.7日で、取得率は51.7%だったが、100人未満の企業は7.1日の43%。企業規模が小さいほど、1人当たりの従業員の労働環境が悪化していることが分かった。

 産業別では電気・ガス・水道業の15.3日が最長で、飲食店・宿泊業は4.2日で最も短かった。同省は取得日数の差について「大企業中心の『半役所的な』電気業などは比較的休みがとりやすい環境が整っており、飲食業などは営業時間の延長などが影響したのではないか」と推察している。

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/071012/trd0710122147011-n1.htm
産経ニュース 2007.10.12

2008年2月20日水曜日

非正社員増加が背景…日本の貧困世帯率ワースト2

経済協力開発機構(OECD)が20日発表した「対日経済審査報告書」は、日本の所得格差の拡大が経済成長に与える悪影響に懸念を示した。特に、所得が低い「相対的貧困層」の割合(2000年)は、OECD加盟国の中で日本が米国に次いで2番目に高いと分析しており、バブル崩壊後の景気低迷で、コスト削減を進める企業がパートやアルバイトなど賃金の安い非正社員を増やしたことが、所得の二極分化を助長させたことを裏付ける形となっている。

 報告書では、OECD加盟国のうち判明した17か国について2000年の相対的貧困率を列記した。最も高い米国が13・7%で、日本の13・5%が続き、次いでアイルランドが11・9%だった。一方、最も低いチェコは3・8%と大きな差が付いた。

 日本の統計上でも非正社員の増加は顕著だ。厚生労働省の毎月勤労統計によると、国内の「パートタイム労働者」は、2000年を100とする指数で、1995年の82・7から2005年は124・6へと大幅に上昇した。一方、主に正社員を示す「一般労働者」は、1995年の103・3から2005年は93・6に低下している。

 報告書は、非正社員の増加による格差の拡大を防ぐために日本がとるべき対策として、〈1〉正社員を増やしやすい雇用制度に改める〈2〉非正社員に社会保険の適用を拡大して所得の増加を図る〈3〉母子家庭などの世帯向けに社会福祉支出を増やす――などを提言した。

 日本政府も、パート労働者の労働環境改善などの「再チャレンジ」政策を打ち出したが、実効性は不透明だ。国内で論議を呼んでいる格差問題について、海外からも警鐘を鳴らされたことで、改めて抜本的な対応策を練り直す必要がありそうだ。

 日本の「相対的貧困率」が米国に次いで2番目に高くなったことについて、内閣府は「算定に使った統計が国ごとに違うため、日本の貧しい層が飛び抜けて多いとは言い切れない」(幹部)としている。

 OECDが日本の基礎データに使った厚生労働省の国民生活基礎調査は「仕送りで生活している収入の少ない学生」や「長期入院患者」も「1世帯」としている。きめ細かい統計があだとなり、他国より「所得の少ない世帯数が多くなりやすい」という。

相対的貧困率ランキング
順位   国 名    相対的貧困率
〈1〉  アメリカ       13.7
〈2〉  日  本      13.5
〈3〉  アイルランド    11.9
〈4〉  イタリア       11.5
〈5〉  カナダ       10.3
〈6〉  ポルトガル     9.6
〈7〉  ニュージーランド  9.5
〈8〉  イギリス      8.7
〈9〉  オーストラリア   8.6
〈10〉 ドイツ        8.0
〈11〉 フィンランド    6.4
〈12〉 ノルウェー     6.0
〈12〉 フランス      6.0
〈14〉 オランダ      5.9
〈15〉 スウェーデン   5.1
〈16〉 デンマーク    5.0
〈17〉 チェコ       3.8

※OECDが調査できた17か国の統計をもとに集計。2000年。対象は18~65歳。単位・%

日本、「貧困率」2位 -OECD報告書 非正規労働増が影響-


経済協力開発機構(OECD)は二十日、日本経済を分析した対日経済審査報告書を公表しました。報告書は、日本の所得格差が拡大し、二〇〇〇年にはOECD加盟国の中で相対的貧困率がアメリカに次いで二番目に高くなったことを明らかにしています。

 これは、生産年齢人口(十八歳から六十五歳以下)を対象に、税金や社会保障の負担などを引いた後の自由に使える所得である「可処分所得」について分析したもの。同所得分布の中央値の半分以下の所得しかない人口の割合(相対的貧困率)を算出しました。

 日本は一位のアメリカの貧困率13・7%に迫る13・5%で、三位のアイルランド11・9%よりも際立って高い数値となっています。日本の一九九〇年代半ばの数値は11・9%で、「構造改革」路線のもとで、所得格差が増大してきたことを示しています。
 また、生活必需品のコストを基に算出した「絶対的貧困」の率(%)が日本で八〇年代半ばから二〇〇〇年に5ポイント増加したと指摘し、OECD加盟国の中で唯一の国だと述べています。

 報告は、格差拡大の原因に、非正規労働の拡大による労働市場の二極化があると分析。日本に対する勧告として、正規と非正規の労働市場の二極化を是正することが重要な鍵だと指摘、正規雇用増加への「包括的な取り組み」を求めました。

2008年2月14日木曜日

日本の格差は世界的には極小 所得格差、世界各国で拡大…IMF分析

 【ワシントン斉藤信宏】国際通貨基金(IMF)は9日、最新の世界経済見通しのうち分析部分を公表した。 IMFはこの中で「所得の国内格差が過去20年間にわたり、ほとんどの国や地域で拡大してきた」と指摘した。
技術進歩と金融のグローバル化が格差拡大の主因と分析し、格差是正に向けて、労働者が世界経済に 適応した技能を身につけられるように教育や訓練を強化する改革が必要だとの認識を示した。

 IMFは、所得格差を示す代表的な指標「ジニ係数」を使って各国・地域を比較した。その結果、 世界的な傾向として、1人当たりの所得が最貧層も含めて増加したが、富裕層の所得はそれを 上回るペースで増えていることが明らかになった。

 国別では、20年前は日本並みの「平等社会」だった中国が、米国を追い越す勢いで格差を拡大させ、 英国や米国でも格差の拡大傾向が見られた。一方、日本国内の格差は世界的に見ると極めて小さいことも 明らかになった。

 IMFは、グローバル化が進展する中で、貧困層の生活水準は改善されていると分析したうえで、 教育改革のほか貧困層への融資拡大や衰退産業から成長産業への労働力移動、貿易自由化の 更なる進展などが格差是正に向けて必要だと提言した。各国別の成長率など経済指標に関する 予想については、17日に公表する。

毎日新聞 2007年10月10日 10時37分

日本の所得格差-OECDの「対日経済審査報告」が示すもの-

Business&Economic Review 2006年10月号 STUDIES
日本の所得格差-OECDの「対日経済審査報告」が示すもの-
調査部 主席研究員 太田清

要約
本稿では、OECDの「対日経済審査報告」(2006年版)を検証するとともに、日本の所得格差について追加的な分析を行い、次のようなことを得た。
日本の所得格差の大きさ(水準)に関しては、OECDの報告は、日本は所得格差が大きいという、これまでの「通念」とは異なった結果を導いている。それは本当だろうかということを検討した結果、OECDの計測は日本の所得格差を先進国のなかで過大に計測(評価)しているとはいえなそうだという結論を得た。

格差が大きい原因は主に税等による再分配が小さいことにある。とくに、中所得層と低所得層の差が税等で縮小しないことは相対的貧困率が高いことの原因になっている。また、欧州諸国との比較では、家族政策に関わる措置が小さいことも日本で低所得者が多いことと関わっている。

所得格差の拡大(変化)に関しては、日本が先進国のなかで不平等な方であり、貧困率(相対的貧困率)が高いということについて、一体いつからそうなったのかをチェックした。その結果、比較的以前からそうだったのであり、最近格差が大きい方に順位を急激に上げたのではないであろうということがわかった。

しかし、1990年代後半以降には格差が拡大した。この格差が拡大した原因は、再分配ではなく労働市場にある。労働年齢層の間で格差が拡大した。とくに政策的に問題となるのはフリーター化など非正規労働の増加である。

以上を踏まえ、次のような点を検討すべきという政策的なインプリケーションを得た。
第1は、若年層のフリーター化など非正規雇用等の問題への対応である。
第2は、将来の消費税率引き上げ時等で格差問題(低所得者問題)に配慮する必要性である。
第3に、所得税における税還付型税額控除の導入である。
第4に家族関係給付・税控除の拡充である。
第3、第4の問題は少子化対策とも接点がある。なお、地域間格差の是正などを公共投資などで行うことは、OECDが指摘したような個人間の所得格差の問題に取り組むうえでは、効率的ではないと考えられる。
(2006.9.1)

世界で広がる経済格差 -市場原理主義のもたらしたもの-

 小泉内閣の掲げた構造改革によって、日本は深刻な格差社会になりつつある。グローバリゼーションの進展により、世界でも貧困と格差が拡大している。
深刻化する所得格差
 「20代の所得格差が拡大し、固定化が懸念される」。厚生労働省が毎年作成する「労働経済白書」2006年版では、これまでの政府見解とは異なった衝撃的な内容が明らかにされた。
 今回の白書の基になったのは、厚生労働省の「所得再配分調査」データだ。2002年度の当初所得データによれば、年収一千万円以上の世帯が13%を占める一方、百万円未満の世帯は約23%になり、二極分化している実態が明らかになった。
 子どもが就学援助などを受けている子育て世代では、「収入ゼロ」と申告する世帯が増えており、通常考えられている以上に「貧困」が蔓延していると考えられる。格差の度合いを示す指標であるジニ係数は1980年代から上昇し続け、30代後半の男性で30%近くもアップした。
 これまで国会論議でも格差問題は取り上げられてきたが、小泉首相は「問題になるほどの格差はない」と繰り返し、それに呼応する内閣府も「もともと所得や資産の差が大きい高齢者世帯が増えてきただけで、見かけ上の格差拡大にすぎない」と格差拡大論に対する否定的見解を発表してきた。今回明らかとなった厚労省の調査結果は、政府部内での意見と認識の食い違いを露にしている。
 「労働経済白書」では、資産格差の拡大を実証するデータも示されている。たとえば貯蓄ゼロの世帯が05年には23・8%と調査開始以来最大を記録。これに対し、貯蓄保有世帯の平均貯蓄額は1544万円と、10年前の1287万円から20%も増加していた。
 さらに「白書」では、30~40歳代の正社員の間でも、成果主義賃金の導入が賃金の格差を広げている実態に言及。しかも、30代前半の男性正社員の配偶者がいる割合は約41%なのに対し、非正規雇用では約8%だ。最初の調査時から2年間のうちに結婚した人は正社員で約10%だったのに対し、非正規では約3%にとどまっている。合計特殊出生率が1・25に落ち込み社会的な衝撃を与えているが、若者の間に広がる格差が、少子化を進める要因になっているのは間違いない。 
 小泉首相は、「格差がない社会なんてあり得ない。格差を認め、力を発揮できる社会が望ましい」と述べている。しかし各人の力が発揮されていくためには、格差が固定化されるのではなく、「再挑戦」が可能になることが不可欠だ。「白書」では、年齢を問わずに就職希望者を短期間試験的に受け入れる企業への助成拡大など、「再挑戦」を支える政策対応を促している。
金持ちだけを優遇する
 急激な格差拡大を促してきたのは、金持ちを優遇しながら、増税し福祉を切り捨てる新自由主義的な政策だ。経済評論家の森永卓郎氏によれば、この政策を合理化する考え方の一つに、「付加価値を生み出すのは、みんなの努力ではなく、一部の能力のある人の努力」という手前勝手な理屈がある。こんな考え方に基づいて所得税の最高税率を70%から37%に引き下げる一方で、配偶者特別控除、老齢者控除を廃止し、年金や国民健康保険の掛け金の値上げを行ってきたのだとしたら噴飯ものだ。
 政府は、定率減税と法人税引き下げを「恒久的減税」として実施したにも関わらず、財政危機を理由に定率減税を廃止する一方、法人税は引き下げを継続しようとしている。来年6月徴収分からの税改正では、個人住民税は一律10%になり、所得税も定率減税廃止分を上乗せして課税される。
 これにより年収300万円の課税額は住民税、所得税あわせて18万8500円にもなり、その他の社会的控除を勘案すると単身者の場合手許には260万円ほどしか残らない。企業が優遇され、国民への課税はますます増えていくのだ。
 額に汗することなく株の売買で100億円儲けても、売却益に対する課税はわずか20%だ。一方で、収入が激減した上に税金が増え、生活基盤そのものが脅かされるギリギリの状態に多くの労働者が追いやられている。
 病気や怪我、会社の倒産などをきっかけに職を失い、社会的復帰が困難になる状況は誰にでも起こりうる。こうした人々を排除するのではなく、社会的に包摂していく機能を充実させなければ、不平等が固定化され、結果として社会全体の活力が失われてしまう。
 日本におけるセーフティ・ネットの象徴は生活保護制度だ。ここ10年で保護を受ける世帯数は増加し、120万人を突破したという。しかし、この制度は多くの問題を抱えている。生活保護は、労働所得がわずかでもあると、その分を扶助費から差し引かれ、また保護そのものを打ち切られるケースが多い。その結果一度生活保護が認められると、労働や自立へのインセンティブが働かなくなってしまい、社会の底辺で固定化してしまう。
 日本の生活保護制度は、イギリスのブレア政権が「第三の道」のスローガンとして掲げた「社会的包摂」「福祉から労働へ」とは対照的に、生活保護に陥った人がそこから再び立ち上がり、再挑戦していく制度として整っているとはとてもいえない。むしろ個人の尊厳と自立心を奪い、社会的階層分化を固定化するものになっている。働いて収入を得ても50%が手元に残る在職老齢年金などを参考に、制度の見直しが求められている。
 かって失業や病気、怪我で困窮した人を救済し、再生を助けてきた家族や親戚、地域のコミュニティーは急速に機能を失いつつある。相互扶助の自治的な繋がりを再建すると共に、税制や福祉制度のあり方を改革し、新自由主義、市場原理主義的な構造改革路線から脱却していくことがますます問われている。
絶対的貧困の拡大
 メリルリンチ日本証券によると、居住目的の不動産を除く100万ドル以上の資産を保有する人は世界で830万人いるが、その6人に1人が日本人だという。グローバリゼーションのなかで、先進国のごく一握りの人々が極端に豊かになる一方で、貧困と格差が拡大の一途をたどっているのも世界の現実だ。
 約60億の世界人口のうち、現在なお、12億もの人々が貧困状態の中で生活している。最も貧しい5ケ国と、最も豊かな5ケ国の一人当たりGDP(PPP)の平均を比較すると、1950年には1対19であった格差は、1992年には1対37にまで拡大した。
 特にサハラ以南のアフリカ諸国は世界で最も貧しい地域だ。国際社会の援助が差し向けられ、「貧困を過去のものにしよう(Make Poverty History)」という標語が掲げられてもなお、解決し得ない多くの問題を抱えている。  アフリカ諸国は、独立を実現した1960年代とは対照的に、1970年代以降経済成長の低迷に苦しんでおり、多くの国ではマイナス成長を記録している。国民の半数以上が1日1ドル以下の生活を送っている国もある厳しい状況だ。
 昨年、スコットランドのグレンイーグルスで開かれたG8サミットでは、アフリカからの代表8名を加えてアフリカ問題について討議が行われ、一部の債務免除や、500億ドルの途上国支援の大半を今後5年間アフリカに差し向けることで合意された。日本もODAを100億ドル増加させることを約束し、再びアメリカに次ぐ世界の援助大国となった。
 しかし、事態は少しも改善されていないばかりか、アフリカ諸国の貧困、格差はますます深刻さを増している。国連は今年2月、アフリカの30ケ国で4000万人が食糧危機にあり、緊急援助が必要だと発表した。国際社会は2015年までに世界の飢餓を半減させる目標を掲げたが、早くも修正を迫られている。
 20年以上もアフリカに係わってきたジャーナリストの石弘之氏は、「サハラ砂漠から南のアフリカで、大変なことが起きている」「事態は予想を大きく超えて悪化している」(『子どもたちのアフリカ』2005岩波書店)と警鐘を鳴らしている。
 事態悪化の最大の原因はエイズの蔓延だ。この20年間に世界のエイズウイルス(HIV)の累計感染者数は6500万人に上り、2500万人以上が死亡した。死亡者のうち2000万人はサハラ以南のアフリカの感染者だ。国連エイズ特別総会では「15歳から24歳までの感染者数を25%減らす」と目標を掲げたが、現在も感染は拡大しており達成は難しい状況だ。
 加えて「貧困」と「犯罪」が事態を悪化させている。1975年には47歳だった平均寿命は40歳にまで下がり、寿命、識字率、所得、就学率など開発の程度を総合指数化した国連の「人間開発指数」の下位25ケ国のすべてがアフリカ諸国で占められる。
 今年7月中旬、ロシア・サンクトペテルブルクで開催される予定のG8サミットを前に、アフリカ問題は国際社会に突きつけられる大きな課題だ。ロシアなどはアフリカの貧困国支援を打ち出しているが、巨額の援助だけでは不十分だ。アフリカ各国の腐敗した政権の下で、巨額の援助が中身のないプロジェクトに浪費され、資金が国外の銀行口座に消える例は後を絶たない。
 こうした状況に絶望し、優秀な人材は次々と国外へ流出している。アフリカから先進国へ移住する医療従事者は年間2万3000人にのぼる。このことは、エイズや貧困に苦しむ多くの人々が見捨てられていくことを意味している。
 フランスの哲学者ポール・リクールは、「人の苦しみはそれを見た者に義務を負わせる」と語った。世界が共同して、この義務を果たしていくための努力をすべきだろう。
アフリカの貧困をほっとけないが
ホワイトバンド・キャンペーン
 坂本龍一や有名タレントなど、セレブを起用したテレビCMで3秒間に一度指を鳴らし、「アフリカでは貧困のために3秒に一人の子どもが死んでいる」とメッセージを発信したホワイトバンド・キャンペーン。
 この宣伝の成功により、白いリストバンドは昨年7月からこの春までに450万本を売り上げた。総売上が140億円、収益は5億1800万円に達した。
 キャンペーンが始まって間もなく、ネット上の議論を発端として「アフリカの子どもを救うといいながら、バンドの売り上げは一円もアフリカに届かない」という批判がこのキャンペーンに加えられるようになった。
 確かに、ホワイトバンドのテレビCMなどを一見すると募金活動とも見えなくはない。しかし、日本でこのキャンペーンを担った「ほっとけない 世界のまずしさ」の呼びかけ文などを見れば、アフリカに直接援助を送るための募金活動だとは一言も書かれていない。
 むしろ多くの市民にアフリカの現状を知らせ、貧困を生み出している日本や世界の改革を訴えるのが狙いで、アドボカシーが目的とされている。その中身をめぐって批判や議論を行うことは当然だが、キャンペーンの主旨や目的が金儲けなどと批判される類のものではなかった。
 ホワイトバンド・キャンペーンは、イギリスを中心に世界的に展開された。昨年7月にスコットランドで開催されたG8で議長を務め、アフリカの貧困問題でイニシアチブをとりたかったブレア政権の後押しもあり、半ば「官製」の色彩が強かったことは否めない。ただ、多くの人々の関心を集め、アフリカの貧困問題や、援助や支援のあり方を巡って広範な議論が巻き起こったことには意味がある。
 ホワイトバンドの成功に後押しされてかどうかは別にしても、今年は「ホテル・ルワンダ」や「ナイロビの蜂」など、アフリカをテーマにした社会派の映画作品が次々と公開されている。
 貧しい人たちが救いを求めるために、白い包帯を腕に巻いたのがホワイトバンドの由来らしい。アフリカを覆うエイズや貧困について多くの人びとの関心を呼びさまし、問題の複雑さと困難さを踏まえつつも、そこから新しい社会運動が成長していくならば、ホワイトバンドの試みも無駄ではなかったはずだ。
(2006年6月25日発行 『SENKI』 1216号1面から)

http://www.bund.org/editorial/20060625-1.htm

経済格差「不満」、日本は83%…BBC・本社世論調査

 読売新聞社は英BBC放送と初の共同世論調査を実施した。

 経済的な格差に不満を感じる人は、日本では83%に達し、サミット(主要国首脳会議)参加8か国ではイタリアの84%に次ぐ高い数値だった。調査を行った34か国の中でも4番目に高く、格差問題の広がりに、国民が不満を募らせていることがわかった。
 経済的格差について、調査では「国民の間に豊かさが十分に公平に行き渡っていると思うか」と聞いた。日本では「全く公平ではない」が33%で、「あまり公平ではない」を合わせると83%が不満を感じていた。34か国の不満を感じる割合の平均は64%で、日本の83%は、これを大きく上回った。
 不満を感じる人が最も多かったのは韓国の86%で、イタリアとポルトガルの84%に日本が続いた。主要国ではフランス78%、英国56%、米国52%などだった。
 BBC・読売共同世論調査は昨年10月から今年1月にかけて行い、34か国の3万4528人から回答を得た。
(2008年2月7日22時39分 読売新聞)