2006年10月6日、朝日新聞は朝刊一面トップで、「日野自1100人偽造出向」の見出しで、東京労働局が同社を職業安定法で行政指導していたと伝えた。
実態は派遣労働者である1100人を、派遣会社と出向契約を結び、出向社員に見せかけて働かせているのは職業安定法が禁じる労働者供給事業にあたるとして、同年7月26日に文書で是正指導したというのである。出向社員として偽造された派遣社員の数は、本社工場(東京日野市)で300人、羽村工場(東京都羽村市)と新田工場(群馬県太田市)で800人の計1100人に上り、派遣会社は14社にのぼった。
労働者派遣法では、製造業の派遣労働に期間制限を設けている。少しでも人件費コストを下げたい製造メーカーからすれば、正社員を雇うより派遣社員を使ったほうが、賃金は半分以下ですむし、必要な人員調整も思うがまま。企業にとって、安く使い捨てにできる派遣社員はこのうえなく魅力的だ。そうであるだけに、かりに派遣社員が無条件で使えるとしたら、どのメーカーも正社員リストラを一挙にすすめ、製造現場にいるのは派遣社員ばかりということになりかねない。
そこで労働者派遣法は、派遣社員を受け入れる場合の制限期間を設けている。製造業においては、2004年3月の改正から07年2月までは、一つの職業の同じ業務について派遣社員を受け入れることができる期間は一年間に限定された(07年3月からは3年間)。しかも、この制限期間を超えて引き続き派遣社員を受け入れようとする場合は、派遣社員に対して「直接雇用」の申し込みを行うことを派遣先メーカーに義務づけている。派遣労働はあくまで「臨時的、一時的」というのが法の建前なのだ。
この「直接雇用」の申し込み義務を免れるために横行したのが「偽装請負」だった。御手洗冨士夫日本経団連会長が会長を務めるキャノンをはじめ、松下、東芝、日立といった日本を代表する大企業がこぞって脱法雇用に手を染めていた実態が、2006年夏以降、次々に明らかになった。
日野自動車の「偽装出向」もこの「偽装請負」と基本的には同じ目的の脱法行為だ。出向といえば、一般的には企業グループ間の技術交流や生産調整のための応援を目的におこなわれる。労働派遣以外には本業をもたない派遣会社から製造メーカーに労働者を出向させることなどありえない。それにもかかわらず、派遣社員を「出向社員」として受け入れる契約を結んでいた行為を指して、東京労働局は職業安定法に違反するとして是正指導をしたのだった。
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